デーツ餡のいちご大福

立春を過ぎて、寒さの中にも陽ざしの暖かさを感じる季節になりました。こういう時季はおやつも春らしいものが食べたくなりますね。

今回は砂糖を使わずに作る大福のご紹介です。大福は草大福、豆大福、塩大福、最近ではチョコ大福やカスタード大福などさまざまなバリエーションが楽しめる和菓子。中でもいちご大福はもちもちの皮と餡の甘み、いちごの酸味が絶妙にあわさった人気者です。最初に考え出した人はすばらしいですね。材料はもち粉、白玉粉、いちご、小豆、デーツ、米飴、塩、片栗粉の8つだけ。意外にかんたんにできますよ!

写真:材料はシンプルです

■砂糖を使わないデーツ餡

デーツは常緑樹のナツメヤシの果実ですが、ビタミンやミネラルが豊富に含まれていて、北アフリカや中東では古くから生活にかかせない大切な食べものでした。イスラム教の聖典コーランに「神の与えた食物」、旧約聖書には「エデンの園の果実」と記されており、紀元前数千年も前から砂漠で暮らす人々の命を支えてきました。

砂漠で育つデーツはその生命力の強さから「生命の木」と呼ばれ、鉄分、カルシウム、カリウム、リンなどのミネラルが豊富に含まれています。中東では、砂漠を移動するキャラバンはデーツとラクダの乳で飢えをしのぎながら旅を続けていました。 また、妊娠中の女性が毎日2~3個のデーツを食べると、生まれてくる子が丈夫に育つと言われています。

デーツにもいろいろな品種がありますが、未熟なものはりんごのような歯ざわりでほのかに甘く、熟すと甘みが強い独特のトロッとした食感になります。ドライフルーツにしたものは非常に甘く、干し柿に似たねっとりとした食感です。そのまま食べてもおいしいですし、ジャムやジュース、意外なところではお好み焼きソースの甘みとコクをつけるために使われていたり、実は以前から広く私たちの食生活に溶け込んでいます。ドライフルーツにしたデーツの糖分の約7割はブドウ糖と果糖からできているので、素早くエネルギーとして利用されることからも注目されています。

栄養豊富なデーツで甘みをつけた餡を作ってみましょう。レーズンやプルーンなどのドライフルーツでも餡は作れますが、デーツは酸味が少なく甘みが強いので食べやすい味に仕上がります。

写真:「神の与えた食物」デーツ

■デーツ餡の作り方

<作り方>作りやすい量

小豆 1/2カップ(約80g)
デーツ 90g
塩 小さじ1/4

①小豆は洗って4倍の水(2カップ)と一緒に圧力鍋に入れて火にかける。圧がかかったら10分煮て10分蒸らす。

②鍋が冷えて圧が抜けたら、みじん切りにしたデーツを加え、デーツが煮溶けるまで弱火でコトコト煮る。途中かき混ぜない。水が減ったら少しずつ足す。デーツが煮溶けたら少し水分が残っている状態で塩を加え、粒をつぶさないよう気をつけながら水分を飛ばし練り上げる。

写真:デーツ餡

写真:手前がもち粉、奥が白玉粉

■大福の皮

大福の皮のレシピにもいろいろありますが、いずれも粉の配合で食感の変化が楽しめます。今回はもち粉と白玉粉が半々。もち粉はもち米の粉なので、もちもちとした食感に仕上がるのが特長です。白玉粉はもち米を水に浸した後、水と一緒に挽いてでんぷん質を取り出したもので、粒子が細かいので柔らかくつるっとした食感に仕上がります。白玉粉だけでも大福はできるのですが、よりもっちりした感じに仕上げたいときは2つをブレンド。

ちなみにうるち米を粉にした上新粉は歯ごたえがあるので、柏餅や草餅などに使います。団子などはもち粉と上新粉を半々くらいで作ると歯ごたえともちもち感のバランスがよいようです。

今回はいちごのピューレを作って粉を溶き、ほんのりピンク色の大福を作ります。

いちご大福の作り方

■大福の皮

もち粉 50g
白玉粉 50g
いちご(皮用)50g
水 50cc
米飴(アガベシロップ) 小さじ1

■大福のフィリング
餡 150g
いちご(具用) 5個
片栗粉 適量

<作り方>

①皮用のいちご50gと水50ccをフードプロセッサーにかけておく。ボウルにもち粉、白玉粉をあわせて混ぜ、いちご水を注いでよく混ぜてこねる。

②強火にかけた蒸し器にぬれふきん(オーブンペーパー)を敷き、①の生地をいくつかにちぎり棒状に並べる。強火のまま20分蒸す。

③蒸しあがった生地をふきん(オーブンペーパー)のままボウルに取り出し、熱いうちに米飴をからめてよくもみこねる。

④③を片栗粉の上に出し、5等分する。生地を手のひらで均一の厚さの円形にのばし、真ん中に1個30gの餡といちごを丸めておいて、生地が均一になるよう注意しながら包む。

いちごと水でピュレを作り、粉を溶く

火が通りやすいよう小分けにして蒸す

蒸しあがったら片栗粉の上に

餡といちごを包んでできあがり

どうでしょう、少しの塩で自然の甘みを引き出した、素材の味の感じられる大福のできあがりです。皮のいちごは入れずにその分を水に代えても大丈夫です。餡の中にはキウィやバナナ、柑橘など入れてもおいしいですよ!

◆専門家プロフィール◆

岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。