
らっきょうピクルス
夏至を過ぎて本格的な梅雨が到来。この時期は、梅、実山椒、らっきょうと保存食作りが忙しくなってきますね。
さて、今回ご紹介するのは「らっきょうピクルス」。らっきょうと言えば甘酢漬けが一番に思い浮かびますが、毎年漬けていると少々食べ飽きることも。調味酢を洋風にして、他の野菜と一緒につけるとカラフルならっきょうピクルスができあがります。先に塩漬けを作り、その一部をピクルスにしますので、2つの味が楽しめます。

■らっきょうは食べすぎないように
らっきょうが出荷されるのは5月~7月、初夏を感じる野菜です。ユリ科の多年草で、玉ねぎなどと同様に地下の鱗茎(りんけい)を食べます。独特の香りと辛み、歯ごたえのよい食感が特徴で、甘酢漬け・塩漬け・醤油漬けなどにして食べます。
ねぎ、にんにく、玉ねぎ、にらとともに「五葷(ごくん)」と呼ばれ、香りや刺激が強いので精進料理では避けられる食材です。血液をサラサラにする効果のある「硫化アリル」という物質(玉ねぎの辛味のもとも同じ)が多く含まれていて、食べ過ぎると胃もたれを感じたりするのでご注意を。食物繊維も豊富ですが、食べ過ぎるとかえって下痢などの原因になることも。さまざまな効果があるだけに、食べ過ぎてはいけない強い野菜なのです。

■下ごしらえを乗り切る
らっきょうは、泥付きのものと、洗いらっきょうが売られています。らっきょうの生長は旺盛なため、1日おくと切ったところから芽が出て固くなっていきます。できるだけ掘りたての泥付きらっきょうを手に入れて、すぐに洗って塩漬けにしたほうがよいでしょう。
洗って泥を落とし、根と茎の先を切って、薄皮をきれいに剥いて処理をします。らっきょう漬けは保存食の中でも「めんどうくさいなぁ」と思ってしまうものの一つですが、黙って作業をしているとだんだん頭の中が静かになってくるのもおもしろいものです。ここでぐっとがまんして、手をぬかずに丁寧に下ごしらえすることで、仕上がりのおいしさが違ってきます。

■保存食と塩
保存食は、長く雪に閉ざされたり雨が降らないなど、季節や風土の関係で食べものの確保が難しい場合に、貯蔵方法として工夫されてきた生活の知恵です。長期間保存して食べるため、腐敗はもちろん虫やカビなどの害を受けないようにする必要がありました。伝統的な方法としては塩蔵、乾燥、燻製、発酵などがあります。特殊な機械を使用しなくても各家庭で作ることができ、その土地ならではの特色のある食べ物として世界各地でさまざまな保存食が親しまれています。
「塩漬け」は腐敗しにくいという意味では一番安全なのですが、本当に腐敗しない塩分にするとかなり塩辛く、食べるときには塩抜きが必要なこともあり、また減塩指向も影響してだんだんに廃れていっているようです。
今回のらっきょう漬けは塩分約6%なので、刻んで食べてもおいしく、そのままで塩辛いと思う方は水に1時間ほど放って塩抜きする、というくらいの塩分ですが、やや塩が少ないため、冷蔵庫で保管したほうがよいです。梅干しも常温で保存するには18~20%くらいの塩分で漬け込んだ方がおいしく仕上がります。
昔の庶民は、少しの塩辛いおかずでたくさんのごはんを食べていました。貧しいようで、冷蔵庫に頼る時代とは別の理にかなった点も多々ありますが、この話は長くなるのでまたの機会に。



■らっきょうピクルスの作り方
■らっきょうの下ごしらえ
<材料>らっきょうの塩漬けの材料
・下処理済みのらっきょう 600gほど
・塩 大さじ3強(約50g)
・煮沸して冷ました水 200cc
・赤唐辛子 1本
①ボウルにらっきょうと水を入れ、らっきょうに付いた土を洗い落とす。二つ三つがくっついているらっきょうの株があれば、手でバラしながら1個ずつ分ける。外の皮は剥き、根元は切り落すので、ざっと手早く洗ってざるで水を切る。
②らっきょうの根元と先端を切り落とす。根元は付け根ぎりぎりのところで切り落とすようにして、先端は長すぎる部分を切り落とす。
※先端を残しすぎると漬けたあとに先端部分の皮が硬めなので口に残ることがありますし、切り落としすぎると漬かり過ぎの原因になるので注意
③らっきょうの一番外側の薄皮は、硬くそのまま漬け込むと美味しくないので取り除く。ボウルに水ためた中にらっきょうを入れ、もみ洗いすると薄皮がはがれてくるので、取り除きながら洗う。きれいになったものをざるに上げてよく水を切る。
⓸らっきょうをチャック袋に入れて、分量の塩を全体に混ぜ合わせる。一度沸かして冷ました水200ccと唐辛子を加える。冷蔵庫などで保存し、時々上下を返して全体が塩水につかるようにする。1週間後くらいから食べられる。
■らっきょうピクルス
塩漬けしたらっきょうの1/3くらいをピクルスにするときの目安
・塩漬けらっきょう200g
・その他の野菜(パプリカ・きゅうりなど)100gほど
■ピクルス液の材料
・酢 300ml
・アガベシロップ 120g(砂糖 60g)
・水 100ml
・塩 小さじ1/2
・赤唐辛子 1~2本
・粒コショウ 5~6粒
・ローリエ 2枚
・フェンネル(生葉) あれば少々
①ピクルス液の材料を小鍋に入れ、沸騰寸前まで温め、冷ます。
②熱湯消毒した瓶に、食べやすい大きさに切った野菜と塩漬けのらっきょうを入れ、①のピクルス液をかぶる高さまで加える。
③1~2週間おいてらっきょうに味がなじんだころから食べられる。
※らっきょう以外の野菜は1~2日でも漬かるので、らっきょうを漬けた1週間後くらいに入れてもフレッシュな感じに仕上がります。
塩漬けらっきょうはそのまま食べるほか、甘酢漬けにしたり、刻んで薬味にしたり、チャーハンなどに入れてもおいしいです。ピクルスにしたらっきょうは、タルタルソースやドレッシングなどでも楽しめます。

◆専門家プロフィール◆
岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。