ザワークラウト

桜が散って若葉となり、新緑が美しい季節になりました。畑もすっかり春野菜の季節です。春野菜と言えば「春キャベツ」。ほぼ一年中食べることのできるキャベツも、ほんとうにみずみずしいおいしさはこの時期だけ。ぜひ味わいたいですね。

さて、今回ご紹介するのはキャベツの乳酸漬け「ザワークラウト」。ドイツ語でSauerkraut 、「酸っぱい野菜(の葉)」という意味になります。ドイツの伝統料理として有名ですが、ヨーロッパ・ロシアのほか、ドイツ移民の多いアメリカやカナダなどでもよく食べられています。肉料理に添えたり煮込み料理に加えたり、日本のたくあんや韓国のキムチと同様にドイツの家庭料理には欠かせない発酵食品です。

最低限の材料はこれだけ


■乳酸菌とビタミン、食物繊維がいっぱい

ザワークラウトの酸味は乳酸菌が出す乳酸によるもので、伝統的な作り方では酢などは加えません。地方や家庭ごとに作り方はさまざまですが、基本的にはキャベツや赤キャベツを千切りにし、塩とスパイスを入れてよく混ぜてビンや樽に詰め、漬物石など重しをのせて押しをかけ、常温で保管します。

キャベツにはビタミンCと食物繊維が豊富に含まれており、加熱せず乳酸発酵させることでさらにビタミンCが増えます。ドイツの冬は本当に寒く、生野菜が貴重品になるため、加熱してもビタミンCが壊れにくいジャガイモと並んで貴重な食べものなのです。ドイツと言えば、ビールとソーセージ、ポテト、そしてザワークラウト、実に理にかなった伝統食なのです。

■植物性乳酸菌は野良育ち

さて、ザワークラウトの酸味は乳酸菌が作り出すもの、と書きましたがこの乳酸菌にはさまざまな種類があります。大きく分けるとヨーグルトなどを発酵させる動物性乳酸菌と、漬物などを発酵させる植物性乳酸菌の2つです。微生物として見た時に動物か、植物か、ということではなく発酵させる相手が違うということですね。動物性乳酸菌が胃酸で死んでしまうのに対して、植物性乳酸菌は酸にも強く腸まで生き残ると言われています。動物性乳酸菌が豊富な乳糖を餌に保温されて育つのに対して、植物性乳酸菌は野菜の糖分を餌にし、しかも塩分が強く温度も低い中で育つという違いがあり、言ってみれば「温室育ち」
「野良育ち」という違いがあります(あくまでも強さ、という点での例えです)。

もちろん動物性乳酸菌が作り出す栄養素もさまざま有用で、乳製品にも植物性乳酸菌が使われていたりしますが、腸に生きて届くという意味では、漬物や味噌などはもっと食卓にたくさん取り入れたい食べものです。和食が好みでない人にも、洋風の漬物であるザワークラウトはおすすめです。

千切りの細さは好みで


■野菜は切り方で味が変わります

ザワークラウトはキャベツを千切りにします。でも千切りと一口に言っても人によってイメージする太さが違ったりします。細く切ればしんなりと漬かりこんだ仕上がりになり、太めに切れば食感の残るフレッシュな感じに仕上がります。太すぎればザワークラウトらしさが出ません。細く繊細で上品なザワークラウトが好きな人もいれば、ワイルドに不ぞろいに切ったザワークラウトが好きな人もいます。

千切りキャベツはわかりやすいのですが、葉脈に沿って切れば食感が残ります。葉脈に対して直角に繊維を断ち切るように切れば口当たりは柔らかくなります。固いキャベツを太めに切る場合は繊維を断ち切ったほうが食べやすいのですが、柔らかい春のキャベツをごく細い千切りにする場合は、繊維を断ち切ってしまうと漬けこんだ時にモロモロになることがあります。キャベツの顔を見て、できあがりのイメージを考えながら切ることがおいしさのポイントです。冬キャベツは横、春キャベツは縦。固いキャベツは横、柔らかいキャベツは縦、という大雑把な覚え方でもよいのだと思います。

よく塩と混ぜる


■スパイスはお好みで

ザワークラウトの風味を決めるスパイスはキャラウェイシードですが、好みで違うスパイスに代えても楽しいです。タイム、ディルなどは少し違った味わいになります。いずれもパウダーではなくホールスパイスを使います。日本のスパイスである生姜でもちょっと変わった味わいに。クミンならインド風に。同じ味であまりたくさん作ると食べ飽きてしまうので、キャベツを半分ずつ違う味で作るのがおすすめです。

空気をしっかり抜く

 

ペットボトルは水の量で重さを調節できる


■ザワークラウトの作り方

水分が多い方がおいしくできるので、春キャベツの時期に作るのがおすすめです

<材料>
キャベツ 1/2個
塩 キャベツの2%
キャラウェイ 小さじ1くらい
赤トウガラシ 1~2本

<作り方>
①キャベツは外葉をはずしてさっと洗い、水を切って千切りにする(洗いすぎると天然の乳酸菌が流れてしまうので泥をおとす程度にする)。

②キャベツの重さの2%の塩をまぶして、よく洗った手で揉む。キャラウェイを混ぜ、種を除いた赤唐辛子(あればローリエ1~2枚)と一緒にチャック袋に詰めて空気を抜く。

③バットなどに袋を平らに置き、同じバットかカットボードなどを上に置いて、キャベツの2倍くらいの重さの重石をする。20℃くらいのところに2~3日おく。水の上がりが悪い時は重石を重くするか2%の塩水を足して、できるだけキャベツが液に浸かっている状態にする。

④泡が出て発酵したら冷蔵庫に移し、寝かせながら食べる。

※保存瓶などで作る場合はよく熱湯消毒する。真夏は冷蔵庫でゆっくり作る方が安心です。
冷蔵庫で1週間程度保存可能。

※酸味が欲しい時はワインビネガー大さじ2~3くらいを足してもよい。

保存瓶はよく熱湯殺菌する

 

◆専門家プロフィール◆

岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。