
焼き栗ごはん
9月終わりごろになってもまだまだ真夏のような暑さが続くことが多いですね。とはいえ、暑さ寒さも彼岸まで、朝夕は徐々に涼しくなって乾いた晴天も見られるようになると、秋の作物が店頭に並び始めます。その代表格が栗。昔は近所の雑木林に落ちている毬栗をこどもたちが拾ってきて、足で踏んで殻を開けたものですが、今では栗畑で栽培された立派な栗を買い求めることが多くなりました。栗は食べたい、でも鬼皮、渋皮をむくのに手がかかって面倒、と躊躇する方も多いと思いますが、今回は楽においしく栗をいただく方法のご紹介です。
■栗は野菜か果物か
さて、栗は野菜か果物か、どちらなのでしょうか。「果物」は、農林水産省の分類方法で「樹木に生育するもの」という定義があります。ですので「栗」は果物ということになります。ちなみに「野菜」は「草花で樹木に生育しないもの」です。そのためイチゴやメロン、スイカなどは、果物ではなく「野菜」に分類されています。
一方で、食品分類上の「果物」というのは「何も調理しない状態でも甘く食べることができる植物や果実」です。栗をこの定義に当てはめると「果物」ではなく「野菜」ということになります。スーパーの商品売り場で「野菜売り場」に並べられているのは、食品分類で考えるからなのですね。
ところで、栗の栄養価はといえば、皮をむいた100gあたりのカロリーが164kcal、ジャガイモの2倍、米の半分くらいとエネルギーが多いのです。他にもビタミンB1やカリウム、各種アミノ酸も豊富に含まれている優れた食べものであり、古くは縄文時代からさかんに食されていたのもうなずけます。

■栗の皮は焼いてむく
野菜の皮はなんでもそうですが、栗の渋皮にもポリフェノールの一種、タンニンが多く含まれており、抗酸化作用により老化の防止やガンの予防に効果があるそうです。栗の渋皮煮は重曹を加えて煮ることで渋皮を柔らかくする食べ方です。
栗ごはんに渋皮がついたままの栗を使うのは無理でも、少々渋皮が残っているくらいが味わいがあっておいしいですし、次にご紹介するように焼き栗にすると渋皮もぽろっととれて、捨てるところが少なくおいしいのです。
栗の皮むきは熱湯につけるなどいろいろな方法がありますが、焼き栗にするのが栗をおいしく食べる方法としておすすめです。甘栗もそうですが、水につけずにじっくり火を通すことで甘みが凝縮されます。焼き栗としてそのまま食べるなら弱火でフタをして15分ほど炒って芯まで火を通します。
ごはんに入れる場合は皮だけに火を通したいので強火で混ぜながら5~10分程度で鬼皮を焦がします。鬼皮が真っ黒に焦げたころには渋皮もパリッとはがれるくらいになっているはずです。この時、栗にはあらかじめ必ず切り込みを入れてください。切り込みを入れないと昔話の「さるかに合戦」のように栗がはじけて飛びますからご注意を!

■焼き栗と鉄フライパンのすすめ
焼き栗は強火で空焼きするので、テフロンなどのフライパンではできません。必ず鉄のフライパンか中華鍋で炒ってください。テフロン加工されたフライパンは焦げつかず便利ですが、傷がつくとそこからコーティングがはがれて使えなくなりますし、空焚きしてもだめです。そこへいくと鉄のフライパンは強火で焼いても大丈夫、少々かたいヘラをあてても傷はつきません。捨てても最後は錆びて土に還ります。
鉄のフライパンは手入れが難しく錆びやすいと思われる方が多いようですが、最初のうちだけ少し多めの油で調理し、洗剤を使わずにたわしでさっと洗って焼いて乾かす、ということさえ習慣にすれば10年でも20年でも使用に耐えるすぐれものです。一生もの、という意味でも30cmくらいの中華鍋と24~26cmくらいのフライパンがあれば充分です。中華鍋は水を張って蒸篭をのせれば蒸し物に、揚げ鍋としても使えて万能です。
鉄のフライパンをお持ちでない方は、魚焼きグリル、オーブン200℃、オーブンレンジトースターでも焼くことができます。いずれも必ず切り込みを入れた栗を並べて12~15分程度様子を見ながら焼きます。ごはんにする場合はレシピを参考に、塩や塩こうじなどでシンプルに味わうのが焼き栗のおいしさが堪能できておすすめです。今年はぜひ、焼き栗のおいしさを味わってみてください!


■焼き栗ごはんの作り方
<材料>
白米 1.5合
もち米 0.5合(なければ白米2合にしてもよい)
栗(殻付き)400g
塩 小さじ1
酒 大さじ1
<作り方>
①栗は汚れていたら拭く。丸くなっている側に切り込みを入れる。
②鉄のフライパンか中華鍋で、強火で時々混ぜながら鬼皮が焦げるまで炒る。
③割れ目が開いて鬼皮が焦げたら火からおろし、冷め切らないうちに皮をむく。
④渋皮もうまく火が通っていれば手でパリパリむける。むきにくい時は再度フライパン強火で短時間炒る(渋皮は好みだが少々残っているくらいがおいしい)。
⑤米は洗ってふつうに水加減して1時間ほど浸水しておく。
⑥酒と塩、栗を加えて炊飯する。土鍋の場合は中強火で15分ほど炊き、火からおろして15分蒸らす。

◆専門家プロフィール◆
岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。