
少しだけ作るバジルペースト
放っておいてもぐんぐん育つ丈夫なハーブ、バジル。旬の夏には採っても採っても次々生えてきます。手作りのバジルペーストは香りも味も抜群。松の実が入っているのが通常のレシピですが、「木の実」であればなんでもおいしくできます。今回はどこでも手に入るミックスナッツを使った作り方のご紹介です。
■バジルペースト、ジェノベーゼ
バジルはイタリア語ではバジリコ、シソ科の植物で、紀元前にインドからヨーロッパに伝えられたとも言われています。トマトとの相性がよくイタリア料理で多く使われ、バジルペーストにパルメザンチーズを加えた「ペスト・ジェノベーゼ」が有名です。日本にこのジェノベーゼが紹介されたころには、まだほとんどバジルの栽培はされていなかったので、シソとパセリを使って代用していたとか。今では種が手に入るので、プランターや植木鉢で育てておくとフレッシュな香りを楽しむことができます。
バジルペーストのもう一つの素材である松の実は、ヨーロッパでは庭園によく植えられている「イタリアカサマツ」の実です。日本で手に入る松の実は、中国などさまざまな国の幾種類かの松の実であることが多いですが、これもくるみやアーモンド、カシューナッツなどでも代用できます。油分の多いマカダミアナッツなどでもおいしくできます。

■少しだけ作る保存食のすすめ
季節の保存食のレシピを見ると、旬の時期にとれた素材を大量に調理するものが多くあります。でも実際はそんなにたくさんの素材が一度に手に入る機会は少ないのではないでしょうか。プランターや庭の隅で育てたバジルだと、一度に摘んでも一握り、二握りということも多いでしょう。
そんな時には、手に入った量で少しずつ作って食べきってしまうことをおすすめします。たまたまたくさんの素材が手に入った時は、たくさん作って保存するればよいのです。
ちなみに、大量にペーストを作る時には便利なフードプロセッサーですが、少量ではうまく回りませんので、日本のフードプロセッサーである「すり鉢」を使います。このすり鉢、ひとかかえあるような大きさのものを想像する方が多いかもしれませんが、日常的に使うのでしたら15~18cmくらいの小ぶりのものをおすすめします。大きいすり鉢はしまう場所にも困る、出してくるのも洗うのもめんどう、ということでお蔵入りしてしまいがちです。
ゴマも炒りたてすりたての味わいは格別。小さいすり鉢なら毎日でも使う気持ちになるので、お手元に一つ持っておかれることをおすすめします。

■すり鉢のコツ
フードプロセッサーは、材料をすべて投入してスイッチを入れるだけでたいていのものがペースト状になります。でもすり鉢の場合は、もとの材料が固かったり大きかったりする場合は、そのまますり始めてもなかなか小さく砕けていかずに時間がかかります。
ひと手間かかりますが、素材を包丁で適度に切ってからすり始めるのが、すり鉢のコツの一つです。ナッツもバジルの葉もある程度の大きさに刻んでからすり始めれば、あっという間にペーストになります。
また、すり鉢に入れる順番は固いものから柔らかいもの、固体から液体、という順番が大切です。たとえばあわせ調味料を作る場合も、先に醤油や酒を入れてから味噌を入れるのではなく、味噌に少しずつ醤油や酒を加えていきます。
初めに刻んだり、めんどうだなあと思われるかもしれませんが、フードプロセッサーを分解して洗う手間と時間もそれなりにかかることを考えれば、少量は小さいすり鉢で、大量ならフードプロセッサーを活躍させる、というふうに使い分けるのが楽ですね。
この夏は小さいすり鉢で、フレッシュなバジルペーストを楽しんでみてください!

■バジルペーストの作り方
<材料>直径15~18cmくらいの小さいすり鉢で作る量
バジルの葉 30g(片手でひとつかみくらい)
ニンニク 1/2カケ
オリーブオイル 大さじ2
ミックスナッツ(無塩) 15~20g(大さじ山1)
塩 小さじ1/6
<作り方>
①バジルの葉は洗ってよく水気をふき取り、包丁で粗く刻む。
②ミックスナッツは軽く炒って細かく刻む。ニンニクもみじん切りにする。
③①、②と塩、オリーブオイルをすり鉢に入れてよくする。
※フードプロセッサーにかける場合は4~5倍くらいの量で作らないと機械がまわらないので注意してください。
※パルメザンチーズを入れたジェノベーゼにした場合は、日持ちはしにくいのではやめに食べきります

◆専門家プロフィール◆
岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。