土用を過ぎても干してこその梅干し

どんよりと曇った梅雨寒の日が続いており、太陽が恋しいですね。こうも晴れないと畑の野菜や田んぼの米は大丈夫かしらと気になります。さて、今回は梅干しの2回目。紫蘇漬けから土用干しまでのお話です。

■赤梅干しか白梅干しか

「梅干し」には赤紫蘇で色をつけた「赤梅干し」とそのままの色の「白梅干し」があるのをご存じですか。「白梅干し」は別名「関東干し」とも言い、小田原の梅干しは白干しであることが多いようです。なぜなのかは調べてもよくわからないのですが、赤紫蘇を入れるようになったのは江戸時代頃からのようで、材料や工程が多い分、贅沢品だったと思われます。関東の武士文化はどちらかといえば質素を旨としていたので白干しだったのかも…と想像してみたりします。

個人的にはやはり赤紫蘇で染まった赤梅干しの方が香りよく美しいなと思いますが、あっさり梅そのものの味わいをいかした白梅干しもおいしいものです。今回は、赤梅干しをご紹介しますが、紫蘇漬けの工程を省いて干せば白梅干しにもできます。

■赤紫蘇をもむ

前回、梅を塩漬けにするところまでをご紹介しました。

梅干しはまさに塩梅

6月下旬から7月上旬にかけて赤紫蘇が出回ってきますので、これで梅に色をつけます。その後、7月下旬の梅雨明けを待って土用干しをする、というのが梅干し作りの流れです。

赤紫蘇は漬物にも使えるので種まきして育てるのもおすすめ

 

まず赤紫蘇の葉を枝からはずして、たっぷりの水できれいに洗います。面倒な作業ですが、意外に砂や泥がついているので洗うことをおすすめします。水切りに便利なのがサラダスピナーという調理道具。ぐるぐるまわして遠心力で水を切るザル状の道具ですが、これで少量ずつ水を切ってから広げるとかんたんに乾きます。タオルの上に広げてもよいでしょう。

ボウルに赤紫蘇を入れたら、紫蘇の重さの10%ほどの塩を加えてもんでいきます。しばらくするとアクが出てきます。これをぎゅっと搾ってアク汁を捨て、ボウルをいったんきれいにしたらもう1回同じことを繰り返します。よくもむこと、搾ってアク汁を出すことをサボるときれいに発色しないのでここはがんばりましょう。

アク汁はにごった紫色です

 

2回繰り返して最後によく搾ってアク汁を捨てたら、塩漬け梅干しから梅酢をとり、赤紫蘇に加えると、パーッと赤い色に変化します。これが梅干しの赤い色になるわけですね。

赤紫蘇の色は梅酢に反応して赤に変わります

 

この赤く染まった赤紫蘇を梅酢に浸しながら塩漬け梅干しの上にのせたら、容器にはフタをして梅雨明けを待ちます。赤紫蘇を入れてから土用干しまで、2週間くらいはおきたいところです。

■梅干しは土用干し、でも土用を過ぎてもいい 

例年、梅雨明けから1週間くらいはすっきりと晴れることが多いのですが、天気予報を見てできるだけ3日間続けて晴れる日を選んで梅を干します。土用干しは「夜露にあてながら3日3晩」とは言うものの、地域性やその家の伝統など様々な説、方法があって、どれが正しいとは言えないようです。私は昼は外で干し、夜は梅酢に戻すことを3日繰り返す、という方法で干しています。こうすると2回目3回目が1週間後になってもザルに広げたまま置いておくという心配がないので、平日仕事をしている方にもおすすめです。

ちなみに「土用」は年4回あり、立春立夏立秋立冬の前の18日間のことですが、俗には7月末から8月初旬の夏土用のことを指します。この期間中の丑の日が「土用の丑」です。ちょうど梅干しを干すのに適した季節ということで、「土用干し」と言うようになったわけです。

とある梅農家さんは「土用にいっぺんになんて干せねぇから、うちでは秋の彼岸くらいまでかかって干してるよー」と言っていました。もちろん8月のお盆くらいまでの間のほうが天候も安定していますし、日差しも強くてよいのですが、それを過ぎたからといって諦めなくてもよいのです。梅干しはやはり干してこそ柔らかくしっとりとしたまろやかな味わいになり保存性も増します。干しそびれたら梅漬けとしていただくこともできますが、夏が長くなった昨今は9月までかかっても、1日だけでも干すことをおすすめします。

香りを楽しみながら盆ザルなどに並べて干す

 

手前は赤梅干し、奥は白梅干し、半分ずつ作るのも楽しい

 

夜は梅酢に戻しながら合計3日干したら、最後は梅酢に戻さず、梅と赤紫蘇と梅酢を分けて保存します。赤紫蘇はさらに2~3日干して乾燥させ、フードプロセッサーで粉にすれば自家製ゆかりができあがります。粉にせず保管して漬物などに使うのもおすすめです。

梅干しは3か月くらいたってからのほうが塩角がとれておすすめですし、塩分18~20%以上でしっかり漬ければ5年でも10年でももつ宝物のような食べものです。

手仕事はなんでもそうですが、作った人の手の常在菌や家に住んでいる菌、温度などの作用で不思議とその家の味に仕上がります。少量からでも、ぜひ一度は我が家の梅干しにチャレンジしてみてください!

■梅干の漬け方~赤紫蘇漬けから土用干しまで~ 

<用意するもの>

  • 梅・・・塩漬けまで済ませたもの
  • 赤紫蘇・・・もとの梅の重さの10~20%くらいが目安。多いほど赤くなる
  • 塩・・・赤紫蘇の葉の重さの20%くらい
  • 盆ザル・・・竹などでできた平らなザル

 

1.梅に赤紫蘇を入れる

①赤紫蘇の葉を摘み取ってよく洗って乾かし、ボウルに入れる。

②半分の量の塩を振り入れ、全体に馴染ませてから両手で押すようにしてよく揉む。赤黒く濁ったアクが出てくるので、手できつく搾って水気を切り、アクは捨てる。

③ボウルをきれいに洗って紫蘇を戻し、残り半分の塩をまぶして再びよく揉み直す。ここで出てくるアク汁もきつく搾って捨てる。ボウルをきれいに洗い、紫蘇を入れる。

④梅を漬けた容器から少量の梅酢を取り出してボウルに入れ、紫蘇の葉をほぐす。パーッと発色してキレイな赤色になる。

⑤ほぐした紫蘇の葉を梅の上に平に乗せ、紫蘇をほぐして出来た赤梅酢も容器に戻す。土用干しまで日の当らない涼しい場所に保管する。

2.土用干し

①朝の空模様を眺めながら、梅干しを梅酢からあげてざるに並べる。シソも搾っていっしょに。梅酢の容器もゴミがはいらないようにラップなどかけて日向へ。

②1日おいておくと、梅干しは温まってだんだん柔らかに。途中で時間があれば表裏をひっくりかえす。※ザルにくっついていたら無理にはがさないこと

③夜はとりこんで梅酢に戻す。これを3日繰り返し、最後の日は梅酢に戻さずに仕上げる

3.保存

干しあがった梅干しは梅酢、シソと分けて、熱湯で殺菌した保存ビンやカメに詰める。干した赤紫蘇は梅の上に覆うように乗せて保存するか、さらにカラカラに干してフードプロセッサーにかけて「ゆかり」にする。赤梅酢はガーゼ等で濾して、ビンに詰めて保存する。

 

◆専門家プロフィール◆

岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。