
新玉ねぎを丸ごと食べる
新玉ねぎを店頭で見かける季節になりましたね。産地は南の九州から始まって、徐々に関東周辺からの出荷が始まっています。新玉ねぎは、玉ねぎを少し早めに収穫して出荷したもの。一般に玉ねぎは保存のために収穫してから1ヶ月くらい乾燥させますが、新玉ねぎは収穫してすぐに出荷するため皮が薄く、水分が多くてやわらかいのです。新玉ねぎ専用の品種であることも多く、辛みが少ないのでサラダなど生食にむいています。
新玉ねぎはどこからくるの
一年中店頭で見かける玉ねぎ、国内産の半分以上は北海道産です。北海道ではまだ雪の残る2月ごろからハウスで苗作り、4~5月に畑に定植、8~9月にかけて収穫して貯蔵、翌年の春ごろまで出荷するという栽培方法が主流です。これに対して生産量第2位の佐賀県では9月ごろに苗作り、10~11月に定植、翌年の4月ごろから収穫という栽培方法になります。玉ねぎは暑さに弱い作物なので、北海道では短く涼しい夏の間に育て、九州では冬の間にゆっくり育てるという、それぞれの気候にあった方法になっているわけですね。春の「新玉ねぎ」は主に北海道以外の九州から関東で栽培された玉ねぎをいうことが多いのです。
栄養のこと
玉ねぎはビタミンやミネラルなどの栄養は、他の野菜と比べてあまり多いとはいえません。その代わり、ポリフェノールの一種「ケルセチン」、イオウ化合物の「硫化アリル」といった、他の野菜にはあまりない成分が含まれています。
ケルセチンは他のポリフェノールと同じように強い抗酸化作用を持ち、血管をしなやかにして血液をサラサラにする、悪玉コレステロール減らす、脂肪の吸収を抑えるなどのはたらきをすると言われています。
いちばん特徴的なのは「硫化アリル」という成分。生の玉ねぎに感じるネギ臭さや辛み、刺激の元です。硫化アリルは、血圧を下げたり、脳卒中・心筋梗塞の予防、動脈硬化の予防などに効果をもたらす成分とされています。血液中の余分な糖や脂質を減らすはたらきがあるので、糖尿病や肥満の予防効果も期待できます。整腸効果のあるオリゴ糖や食物繊維、塩分の排出に必要なカリウムも多く含まれるので、ビタミンやミネラルが少なくとも、玉ねぎは健康に役立つ成分を持った野菜なのです。
新玉ねぎは生で食べるのがいい?
新玉ねぎは辛みが少なく生食にむいています。では加熱しないほうがよいのでしょうか。野菜はなんでもそうですが、生と加熱、それぞれに一長一短があります。
もともと玉ねぎは野菜の中でも糖分を多く含んでいますが、生で食べた時にあまり甘く感じないのは、辛みを強く感じてしまうからなのです。辛み成分の「硫化アリル」は水溶性で揮発しやすいので、水にさらしたり細かく刻んで空気に触れさせたりすると辛みは減ります。加熱するとのこの硫化アリルが揮発するため、甘みをより濃く感じやすくなります。
また、玉ねぎに含まれる辛みや臭いの成分は、加熱するとセパエン、トリスルフィドといった他の成分に変わります。玉ねぎに火を通すと甘みが増すように感じるのはこれらの変化によるものとも考えられています。血管をしなやかにし、血栓を溶かすはたらきがあるので、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを防ぐ効果があると言われています。
新玉ねぎは生食がおいしいですが、加熱調理にもよいところがあるので、他の料理との組み合わせでバランスよく食べるのがおすすめです。今回ご紹介する「新玉ねぎの丸ごと炊き込みごはん」は新玉ねぎだからこそ、丸ごと炊いてほぐすだけでおいしいのです。工夫次第でピラフやライスサラダなどに展開できるので、ぜひ新玉ねぎが手に入るあいだに作ってみてください。
新玉ねぎの丸ごと炊き込みごはん
◇材料 炊飯器でも土鍋でも炊けます
・米(五分搗き~白米) 2合
・新玉ねぎ 中1個(150~200g)
・塩こうじ 大さじ1(塩 小さじ1)
・オリーブオイル 小さじ2
◇作り方
①新玉ねぎは外皮をむいて頭と根をとる。米は洗ってやや少なめに水加減し、30分~1時間ほど浸水しておく。
②塩こうじとオリーブオイルを加え、米の真ん中に新玉ねぎを半分顔を出すくらいに埋めて普通に炊飯する。鍋炊きの場合は煮たつまで強火、煮立ったら極弱火にして12~15分程度、蒸気がおさまるまで炊いて、蓋をあけずに10~15分ほど蒸らす。
③炊きあがって蒸らし時間をとったら、熱いうちに玉ねぎをしゃもじで崩して混ぜ込む。胡椒をふっていただくとおいしいです。
※オリーブオイルがなかったらなたねサラダ油やバターで、または油なしでもかまいません。
※鍋炊きの方法は鍋によって違いがあるので、お手元の鍋の炊き方に従ってください。
新玉ねぎとミニトマトのピラフ
~炊き込みごはんから炒めないピラフを作る
◇材料 2人分
・ミニトマト100g
・ニンニク 1片
・オリーブオイル 大さじ2
・新玉ねぎの炊き込みごはん 400g
・塩・コショウ 適量
・パセリ 少々
◇作り方
①ミニトマトは1/2~1/4に切る。フライパンにオリーブオイルとスライスしたニンニクを入れて、香りが出てカリッとするまで弱火でゆっくり加熱する。オイルにミニトマトを加えて軽くソテーする。
②炊き込みご飯は蒸すかレンジにかけるなどして温め、玉ねぎはほぐしておく。
③②に①を熱いうちに混ぜ、塩とコショウで味をととのえる。器に盛って刻みパセリなどあしらう。
◆専門家プロフィール◆
岸田美紀
東京生まれ。1991年有機野菜宅配会社のスタッフとしてオーガニック流通の世界に入る。商品開発・カタログ制作など様々な仕事を行うかたわら、リマクッキングスクール他にて料理を学ぶ。その後、穀物菜食カフェのスタッフとしてにて、ケータリングシェフ、料理セミナー講師などを歴任。現在はフリーで「町でもできる自給自足的手づくり暮らし」をテーマに発酵食、保存食、マクロビオティックなどの講座を開催中。流通会社での経験を生かして、メーカー向けレシピ開発やコラム執筆なども手がける。